「王子、面倒なことになるからアリスをおろせ」


城の前にたどり着くと、スペードさんがクロノスさんに忠告するようにいう。
確かに女王様に見られたら、絶対ヤバい気がする。


「そうなの」


と無表情のまま言い私をやさしくゆっくりとおろした。

クロノスさんにおろしてもらってから、私はクロノスさんと並び、草の蔦で出来た門をくぐる。
更に少し進むと大きな門とその両脇には門番が立っていた。


「アリスを連れてきた」


そうスペードさんが淡々と言うと、門番をお城の入口をあけた、ぎぃっと重い音が響く。
門の先には長い廊下が続いていた。


「罠なんか仕掛けられてねぇから、もっとしっかり歩け」


目の前の光景にドキドキしている私に対して、溜息をつきながらスペードさんが言った。
歩くのが戸惑うような高そうな絨毯が拡げられている廊下を通ると、いかにも凄そうな部屋につながっていそうなドアへと案内された。


「やっとあえたな」


ドアを開けた瞬間女性の声が聞こえた。
声の主を見てみると、そこには赤い血のような色のドレスを着た中年の女性が私をみて妖艶な笑みをした。


「この国の女王ブラッティー=コールドだ」


ゆっくりとまたたきすると重々しく自分の名を告げた。


「アリスです」


私の名前など興味ないだろう。


彼女の望んでいるのは、アリスであった、ルイではないそう思い私はあえてアリスと名乗った。