「早く逃げ……」「ごめんね」
少し焦り気味で話すティック。
けれど言い終わる前に、彼の声をさえぎるように優しい男の人の声が聞こえた。
後ろを見ると私の前には5、6人の兵士にスペードさん、そして私から目線を外して話すジョーカーさんが立っていた。
「女王様から……命令が出ちゃった」
私と目が合うとジョーカーさんが口を開いた。
相変わらずの口調だが、その言葉には覇気が感じられず、その様子を見ると彼が敵として現れたいらだちより、罪悪感が生まれてくるようだった。
「アリスを捕らえろって……。」
クロノスさんのように淡々というジョーカーさん。今まで見たことの無いその表情のせいか、その言葉がずしりときて胸の中にちりちりしたような感覚があらわれた。


