これは私の心の奥に閉じ込められている記憶。

あの時は覚えていなかった、何かが見えていた時の記憶。


何かというのは失礼だろう。

銀髪の長い髪に、薔薇のように真っ赤な綺麗な唇、美術館にある天使の絵のような綺麗な若い女性だったから。


名前を言っていた事があったかもしれないけど、その記憶は更に奥に閉じ込められているのか、出てこない。


私だけに見えていた”その人”。

当時の私は怖いとは思わなく、寧ろ触れてしまうだけで消えてしまいそうな“その人”に対して、夢の中にいるようなとても儚ない不思議な感覚を抱いていた。

きっと“その人”が私に対して、何もせずにいつも優しく微笑みながら私を見つめていたからだろう。



「どうしてあなたはすけているの?」


話すきっかけ……
その一言が出てくるのは”その人”が見えてきて半年たったころだった。

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