「王子は過去を忘れたといっていましたよね。両親のことは覚えているのですが、僕が存在していたことは覚えていないのです」
哀しそうな表情で言うティック。
確かにこの世に存在する唯一の肉親が自分の事を忘れているなんて哀しすぎる。
例えば、母さんが急にあなた誰と聞いてきたら……。
そんなの考えたくない。
そんな事を目の前の少年を経験しているのだ。
けれどその話が本当だったとしたら、王子の母親が時の番人の話がわかる。
「僕の知っている王子……いえ兄さんの話を話します」
「……」
そう言うティックはとても真剣な表情で、私は息を飲みながら彼の言葉を待った。
「僕は小さい頃、両親と兄と僕の四人で暮らしていました」
それから……彼が昔話をはじめた。


