「べ……別になんでもない……。」
涙を拭いながら言う。
事情も知っているかもしれないが、知らない人に泣いている姿を見られたくなかった。
「嘘でしょ。何もなかったら涙なんて流さないよ」
そういいながら私の涙を拭うようにほほを触る。
相変わらず無表情のままなのだが、その拭う指はとても温かい気がして、何となくこの人なら信用できると思った。
「本当のことを知ったから」
そう思った瞬間不思議と言葉が出てきた。
「本当の事?」
そういっている割には全く不思議そうな表情はせず、話半分で聞いているような感じだった。
けれど感情がないことを知っている私にはたぶんこうみえてもちゃんと聞いているのだろうと考えていた。
「私の代わりはいっぱいいるんだって」
どうしてだろう……また自然と言葉が言葉が出てくる。


