3人目……


スペードさんの言葉が頭の中を駆け巡る。


3人目


私は……

使い捨ての道具のように、代わりはたくさんいる


ワタシジャナクテモカマワナカッタ


「私は……私は……。」


ルイではなくてアリスだったんだ。

“アリス様”“アリス様”“アリスちゃん”

私じゃない誰かを呼ぶ声が頭の中で繰り返される。

“アリス”“お姉さん”

ティックもビルさんもチェシャもボウ君も……誰も彼もが私を見ていなかった。


“ポタポタ”


哀しみが体全体を支配するとスゥーっと涙が自然と出てくる……


この世界に私は存在しているのだろうか……。


「アリスちゃん」


心配そうな表情で私見つめるジョーカーさん。

何か言いたそうだったが、何も言わず私を見つめているだけだった。


「アリス様」


声の方向を見ると私に手を差し伸べながらそう呼ぶティック……


「私は……アリスじゃない」


ジョーカーさんを睨み、差し伸べてきたティックの手を払うと、私はまわりを振りほどきまっすぐ走っていった。


何処でもいい……


誰もいない所へと走っていった。