「義母さんはこの国の女王だから」


冷淡な私には何の反応もなく……。

たぶんいつもの自分と同じだから私がどう思っているかなんて気づいていないのだろう。
私の言葉に相づちを打つながら、私同様に無表情でカチッと懐中時計を閉めて懐へとしまう。


「本当はもう少し観察する予定だったけど……ごめんね。もう城にもどらなきゃ」


わざと目線を外すとそう続けた。
申し訳ないとでも言いたいのだろう。


「えぇ」


なんとも言えない空気になる。
空気なんて読めない王子様には関係ないだろうが……


案の定


「また今度。命令が出ない限り危害は加えないよ」


そう私に対して作り笑いをしながら手を振ると何処かへと向かった。

私はその表情が頭から離れずに彼がいなくなるまでただ一点彼を見つめるように見送った。


彼は憎むべき存在なのに……



憎しみとは違った切なさや儚さのような負の感情が溢れてきて胸がちりちりしてくるようだった。
胸を押さえながらあふれでてくる感情を整理するように私はしばらくここにたたずんでいた。



けれど……まだ真実を知らない私にはそれを一つ一つ理解することなんて出来なかった。