「あなたの事はスペード=リター隊長から教えていただきました」
解説するようにというよりもまるで英文を日本語訳したように一つ一つ話し始める。
こんなにはやく中ボスに出会ってしまうなんて思ってもみなかった。
「もしかして……その表情…僕と戦うつもりなのでしょうか」
相変わらず語尾を下げる奇妙な話し方をする。
考えが読めない。
「あなたが私を倒しに来たなら」
模擬戦闘はティックとやったことがあるが本当の戦闘は初めてだ。
緊張をしながら太もも付近に差してあるダイナをにぎる。
麻酔銃とはいえ本物の銃に似ているであろうそれは何回握っても慣れない……。
「それなら戦うつもりはないですね」
「どうして」
奇妙な王子の台詞に戸惑い一瞬右手の力が緩む。
けれどそれは一瞬ですぐにダイヤの冷たい感触が思い切り手のひらに伝わってくる。
「僕はあなたを観察に来ました」
私のそんな行動に無関心なのか相変わらず淡々と続ける。
それにしても観察……
嫌な言い方だ。
いくら珍しいとはいえ動物園のパンダみたいな扱いは止めて欲しい。


