「行きましょう」

私の不安な気持ちを和らげるためか、私の手を引きながら出かけた。
その手の温もりが体全体を巡るようで不安な心が安心で満たされていくような感じだった。


「いってらっしゃい」


ビルさんがまるで母親のように優しく私たちを見送った。
最初この家を来る時に通った道を通ると再びこの家のない森の景色に戻った。


「大丈夫ですよ。この道は意外と入り組んでいますから」


その代わり迷いやすいので僕から離れないでくださいと続けると、私の手を握ったまま町へと向かった。

相変わらず似たような景色が前から後ろへと流れていく。
ここまで来たときのように急ぐ必要はないらしく、足音をなるべく小さくして町へと向かった。



それでも私達の小さな足音しかなかった為、森の中に私達の足音だけが小さく響いた。