涼香と母ちゃんの姿が暫く見えない。

 これ幸いに畳に寝っ転がっている俺。

 やっと静かな時間が出来たよ。

 部屋の西から東に通り抜ける風が心地良い……



 「じゃ~ん☆ どう?」

 「か、可愛い」

 濃いめのピンク色の地に赤や白の大輪の花が描かれた浴衣を羽織り、袖の振りを摘まんでクルッと一回りする涼香。

 いつも、二つに結っている髪も頭上に二つのお団子が乗っかっているようにアレンジされている。

 「麻里さんに着付けしてもらったの♪」

 麻里とは、俺の母ちゃんの事。

 「良かった……な」

 涼香の浴衣姿は可愛い。

 だけど、これを他の奴らの目にも留まると思うと

 なんだか複雑……

 そんな俺の想いを知ってか知らずか、無邪気なまでの涼香。

 「祐希くん、何時頃行くの?」

 「本屋も行きてぇから早めに出るわ」

 「じゃ、私も一緒に行こうかな」

 「いいけど本屋だぞ?」

 「うん♪」