フンだ。

 今朝は置いてきぼりにしたくせに。

 なんだか、最近涼香の存在遠いんだよなぁ。

 まさか、新しい男が出来たとか…!?

 んな、わけ……ないよな?

 「能村、ちょっと話がある。今いいか?」

 そんな事を考えていると、タイミング悪く武瑠(タケル)が現れた。

 「佐伯くんどうしたの?」

 「ここじゃ……」

 そういうなり武瑠は、チラッと横目で俺を見てから彼女の手をひいて教室から出た。

 えっ!? マジで?

 気不味い空気を作っちまったから追いかける気にもなれない。

 ……情けねぇ。
 
 二人は、HRに戻って来ることはなかった。

 「篠原、追いかけなくていいの?」

 ウツになっているところへ本城がやってきた。

 「俺にそんな資格ねぇよ」

 「あるよ。涼香の彼でしょう?」

 「多分」

 俺自身最近分からねぇんだよ

 「また喧嘩したの?」

 「してはいないけど……なんかさ、最近涼香の存在が遠いんだよなぁ?」

 ポツリポツリと胸の内を本城に語り出す。

 「――……ふーん、ようするにマリッジブルーってわけね?」

 「そんなんじゃ――」

 そうなのか?

 「早く籍入れちゃいなよ? 男のマリッジブルーなんて聞いた事ないから」

 それだけ言ったら、本城は自分の席に戻って行った。