「暑っちい」

 「そりゃそうよ。夏だもの。それより、早くしないと遅れるよ?」

 「ヘイヘイ」


   ジギジギ ジギジギ……


 太陽がサンサンと照り付けて、ただでさえ暑いってのに。

 コイツらの声を聞くだけで更に暑さが増してくる。

 なんだってアブラゼミはこんなにも暑苦しいんだよ?

 えぇっと、残暑見舞い申し上げます。

 皆様、暑い中ご苦労様。

 オッス、俺祐希。

 覚えていてくれたかな?

 篠原 祐希(シノハラ ユキ)っていうんだけど……?

 あ、もしかしてアンタと会うの初めてだっけ?

 んじゃ、よろしく。

 夏は嫌いだ。暑いしダルイし。しかも今日は――

 「先行くね」

 「あ、おい――」

 俺の呼び掛けた声は、虚しく宙に浮いたまま。

 この薄情もの~!!

 そして、この薄情な奴はクラスメイトであり、彼女に成り立ての能村 涼香(ノムラ スズカ)。

 実は、同じ屋根の下で暮らしている。

 あ、同棲なんかじゃねぇからな!!

 まぁその話はまた後で。

 とりあえず、学校行かねぇとな。

 カバンを担ぎ家を出る。

 涼香に置いてきぼりにされた俺は、トボトボ一人寂しく学校へ向かう。