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「……これを、小柳家で保管していてください」



『はい……、しかし姫様、』





 牡丹はそう言いながら、漆塗りの木箱を乳母に渡す。
それを受け取った乳母も、そう返事をしながらもその表情は牡丹のことを心配しているのか、悲しそうな顔をしていた。




 ……哉匡が傷を負い屋敷へ戻ってから、数日後。
嫁ぐまであと三日はあったのだが、それを推して牡丹は今日柊の家へ嫁ぐ事となった。
それは言うまでもなく、牡丹自身の希望で。
父も母も何も言うことは無かった……。




 哉匡の傷はいまだ完治せず、よって彼は牡丹の側近として共に行くことは無しとなった。
…………それが牡丹の目的だったのだが、それを敢えて口に出して言う者は誰も居なかった。
 

 しかし、牡丹のその姿は小柳家に勤める者たちにとって臣下を大切に思う、いずれは国を治めなくては成らないであろう『姫君』として見えていたはずである。







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