「…千歳様!天狗の襲撃です!」



血相を変えた昴ちゃんが、襖を開けて叫ぶ。



その瞬間、千歳の表情は、一個人としての悲しいものから、凛とした妖魔の長の物へと変わった。




「嗅ぎ付けたか…!とにかく結界を強化し、敵の侵入を防げ!
その間、お前は里の者の避難を手伝え。
瑠璃には兵を呼ぶように伝えろ。分かったか?」



「はい、千歳様!」




廊下を走り去っていく昴ちゃん。



その背中を見つめたまま、千歳は告げた。




「…お前は妖魔の捕虜だ。大人しくこの部屋にいろ」




千歳の口調も態度も、何もかもを変えてしまう、『戦い』。



「止められないの…?」



「甘ったれた戯れ言だよ。…俺には敵を殲滅する義務がある。
……じゃあね、燈。
あんたのこと、やっぱり好きだよ」




襖を閉めて、足音が遠ざかる。