不妊治療には実に多くの負担がかかる。
苦痛をともなう身体的負担はもちろん、精神的負担、それに経済的負担まで……。
初め、しばらくは働きながら通院していた。
あの頃――
退職して治療に専念できたらと、どんなに思ったことだろう。
だけど、辞めるわけにはいかなかった。
だって、保険のきかない不妊治療には莫大なお金がかかるから。
私の不妊の原因は“不明”だった。
人間の体ってやっぱり不思議で神秘的。
何年も不妊治療を続けてダメだった人が、治療をやめた途端デキたって話もある。
結局、できない理由もわからなかったけど、できた理由もわからない、なんて。
まぁそういうときは、原因はストレスってことで結局片付けられるみたいだけど。
決定的な原因となる障害が見当たらない以上、自然に妊娠する可能性も無くは無い。
けど、可能性は“0”じゃないけど“100”でもない。
それに、現在の医学では究明・特定できないだけで、ひょっとしたら……
100%自然妊娠が不可能な原因を抱えていないとも言い切れない、と。
だから、高額な費用のかかる治療も予め視野に入れて取り組む必要があったのだ。



