ラビリンスの回廊



「ひとつ、貸しだからな」


そう言って立ち上がったイシュトに、玲奈は無言を返した。


素直に礼を言えない性格をいい当てられたように感じる。


イシュトの一歩引いた対応に、玲奈はイライラした。


自分がひどく子どもじみていることを見透かされたようで、何も言えないでいる玲奈に、エマが水筒から水をコップに注いで手渡す。


黙って受け取ってそれを飲み干し、溜め息をついた。


ひとり、自分だけが、意固地になっているような気がして。


ぐっと力を入れ立ち上がると、玲奈はイシュトを追いかけた。