意識を手放さないように、と気を張っていたことが効をそうしたのか、気絶することなく後ろを歩くエマに「降ろせ」と言うことも出来た。
にべもなく断られるかと思いきや、エマはイシュトに玲奈を降ろすように頼んだ。
「ついでにこの辺で休もっか」
というルクトの提案に、誰も否定することなく従った。
気候はまた変わり、比較的過ごしやすいものになっていた。
今のうちに体力を回復させておきたい、ということなのだろう。
イシュトは玲奈を降ろすと、どっかとその場に座り込んだ。
疲れた、とも
重かった、とも
何も言わなかった。
それが却って玲奈を恐縮させる。
「……悪かったな」
気付いたときには、そう言っていた。
チラリ、と横目で玲奈を見たイシュトは、口元を優しく歪ませ、今にも吹き出しそうな顔をしている。
そのことに苛立ちながら
「じろじろ見てんじゃねぇっ」
と顔を背けた。
なんだかいやに恥ずかしいのは、おんぶされたことでなのか。
それとも、気絶しなかった自分がこそばゆいとでもいうのか。
考えるのをやめようとしたとき、イシュトが口を開いた。


