ラビリンスの回廊



エマが後ろから声をかけた。


エマは自分の前を歩いていて、その前はルクトが歩いていたはず。

となると、ルクトだろうか。

ルクトであって欲しい。

そう思った玲奈の気持ちは、続けたエマの言葉に完全に打ち砕かれた。


「ですが、大事をとってもう少しお願い出来ますか、イシュト様?」


「まぁ、仕方ないな」


体に響く、低いハスキーヴォイス。


「ぃや……おろせっ!おろせよっ!!」


「うわっ
暴れんな、この、じゃじゃ馬!」


体を反り返して、もっともっと少しでも離れようとしたつもりだった。


だが度重なる境遇に、思うように体は動いてくれない。


それだけでなく、落ちないようにとの配慮からか、玲奈の体とイシュトの体を布が結びつけている。


離れるのが無理だとわかったとき。


ぞくん、と心臓が波打った。


再び気絶しかけた玲奈だったが、現実へと引き戻す言葉が耳に届いた。


「もう少しだけ、寝とけ」


その言葉に、気絶しそうだった脳が反応する。


ここで気絶したら、おぶわれたまま、だ──