ラビリンスの回廊



「……帽子が嫌いなのに、フードはいいのか」


イシュトの言葉に、玲奈は再びギクリとする。


「なになに?
イシュトくんは、レイナちゃんが気になるのかな~?」


はやし立てるように、ルクトがニヤニヤと笑いながらそう言った。


助け船を出したわけではなく、ただ茶化したかっただけのようだ。


それでも玲奈にとっては救いの手となり、イシュトはその話題に乗って冷えた視線をルクトに向けた。


「有り得んな。
こんな、はすっぱな物言いをする女は好かん。
女は淑やかであるべきだ。
そこのエマのようにな」


ぽかぁん、とルクトの口が開いた。


「え、ごめ…ん。
なんだかちょっと上手く聞き取れなかっ……」


「エマのような女が好みだ、と言ったんだ」


堂々とした態度のイシュトに、はからずしもルクトは飲み込まれてしまう。


そぉ~っとルクトが視線をヴァンに移すが、ヴァンは『また始まった』とばかりに頭を押さえていた。


なぜか玲奈が真っ赤になり、当の本人であるエマは、全く何も聞こえていないかのようにいつも通りだった。