ラビリンスの回廊



ルクトと入れ替わりに、ヴァンがイシュトのもとへ駆け寄った。


「お怪我は?」

「……」


無言のイシュトに、ヴァンは小さく息を吐き、そっと前屈みになった。


そして、きっぱりとイシュトに言った。


「いつまで引きずるおつもりですか?
お気持ちはわかりますが、殺気のない剣など……」

その言葉を皆まで言わせぬうちに、イシュトは「わかっている」と呟いた。


「次に向かって来たやつは、……ころ……す」


やっとの思いで絞り出した言葉に、ヴァンは納得しないままだったが、ぐっと言葉を飲み込んだ。


「行くぞ」


のろのろと立ち上がったイシュトは、きゅっと唇をかみ、それでも足早に玲奈のところへ戻っていった。


そんなイシュトの背中に向かって、ヴァンは再び小さく息を吐き、自らも玲奈たちのところへ向かうべく、ゆっくりと足を踏み出した。