ラビリンスの回廊



そう言うが早いか、ルクトは足を踏み出していた。


草にもつれることもなく、一瞬のうちに頭の目の前に立つと、ガチンと金属のぶつかる音がした。


ルクトは、今までのように一刀で切り伏せられなかったことに驚いた様子もなく、寸時ふた断ち目を浴びせる。


「くっ」


頭はそれもなんとか防いだが、だらだらと顔を流れる汗が、ルクトの剣の重さを物語っていた。


ルクトは反撃に転じることのできない頭に第三刀目を向け、それが頭に対する最後の攻撃となった。


大きく袈裟懸けに傷を負った頭は、ぐぇ、と潰れた声を霧散させ、辺りの草に赤い命をぶちまけた。


その間、身動きひとつしなかったイシュトが、がくんと膝を折り、草むらにその姿を沈めた。


両手を地面につき、玲奈にまで聞こえるような荒い呼吸。


ルクトは注意深く辺りを見渡し、神経を尖らせていたが、他に仲間らしきものがいないと結論が出たらしく、丁寧に剣の血を拭った。


そして、玲奈たちの方へ歩きかけ、うずくまったイシュトを通り過ぎるとき、ボソリと呟いた。


「殺す覚悟がないなら、手を出すな」