ラビリンスの回廊



先に向かっていたルクトは手始めとばかりに、斧を振り上げてかかってきた盗賊の首を、見事なまでにかっ切った。


バシュッという血の噴き出る音がする頃には、ルクトは他の盗賊に斬りかかっていた。


剣をなぎ払うと、カパリと首元が口を開け、ルクトに向かって血が飛び散る。


赤茶けた髪が、どす黒くべったりとルクトの顔を覆った。


エマは多少青ざめながらも兄の行動から目をそらすことはなく、そのうえ玲奈を庇うような体勢をとった。


イシュトもその身に見合った剣を携え、包囲している盗賊に斬りかかる。

ルクトのように一撃必殺ではなく、何度も撃ち合いながら相手の剣を捌き、胴や手足を斬って怯ませるような戦いだ。


ときに逆上した相手にはリードを許してしまうこともあり、それでもなんとか辛勝するイシュトに、痺れを切らしたようにヴァンが「やはり……」と呟いたのを玲奈の耳が拾った。


「やはり、って何だ?」


そう言った玲奈の言葉に答えることはなく、ただ独り言として「やはり、イシュト様は誰も殺せない」と深々と息を吐いた。