「ある意味、獣よりタチが悪いかもしれないですね」と言ったヴァンは、少し考え込んだ。


「エマ・ベンス、迂回路はありますか?」

フルネームで呼び掛けたヴァンに、エマでいいと告げ、彼女は静かに頷いた。


「はい。多少遠回りになりますが……」

そこでチラリと玲奈を見て、淡々と言葉を続ける。

「森を迂回する道があります。
半日ほど余計にかかりますが」


「そうですか。
レイナさんも旅慣れてないようですし……
迂回でいいですね?」


事も無げに結論付け、そう言ったヴァンに、イシュトは苛ついたように玲奈を見た。


その視線をはね除け、玲奈はヴァンにくってかかった。


「待てよ!
あたしは歩ける!!
迂回なんて……そんな時間はねぇんだよッ」


「ここで無理をして、疲れをおこされては困りますから」


ピシャリと返したヴァンに、再び口答えをしようとしたとき、イシュトが言った。


「いいんじゃないか、急ぎだっていうなら。
その代わり、それだけ大口叩いたんだ、ヘマすんなよ」


その言葉に玲奈は「上等……」と呟いた。