「紅玉を……しかしあれは、手にしたものの願いを叶えるのでしょう? 我々が手にすれば良いのではないですか?」


損得を換算する顔つきになった男に対し、王妃は小さく顎をひいた。


そうして一時だけ肯定を示したが、すぐ左右に首を振る。


「しかし願いを叶えてしまえば、またもとの位置へと戻ってしまうのですよ」


いかなる原理か、ずっと手元に置いておくことが出来ない紅玉の特性。


示唆した王妃に、男は「そうでしたねぇ」とぼやく。


「我々以外の手に渡ってしまう可能性が消えないのは、確かに面倒ですねぇ。よからぬ輩の手に渡り、我らの王政を覆されてしまっては。それでこの世からなくしてしまおうというわけですか」


ふぅむ。
男は短く息をつき、王妃の考えに同調する。


「王族ともなれば、そう易々と勝手気ままに出歩くわけにもいかず、何度も紅玉入手の旅に出るわけにもいきませんしねぇ」