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「申し上げます!」
“回廊の扉を何者かが突破した”と、慌てた声が王の間に響き渡る。
一報が王に伝えられたのは、ルノが侵入してからまもなくのことだった。
ルノは、扉の見張りについていた兵が王へ報告するのを、天井にじっとうずくまりながら耳をそばたてていた。
「侵入者だと?」
隙間のない天井からは、王の表情を観察することは出来ない。だが王が慌てふためいているのは、声色だけでじゅうぶん容易に想像がついた。
「ええい、お前たちは何をしている! 早く捕らえろ!! いや、わしを守れ!! 殺せ!! 今すぐ!!」
声を高く荒げる王に、ルノは愕然とした。
――こんな……まさか、こんな。
「とにかく何とかしろ!!」
一国の王である者が、まるで駄々をこねる赤子のようだ。
思いついた言葉を次々に放り投げ、命令もなにもあったものではない。
直接言葉を投げられている兵は、さぞかし困惑しているであろうと思ったが、それも王妃の声が聞こえてくるまでだった。


