出立のときは、オーウェンをはじめとしたブラウ兵たちと伴にであったが、いまは彼女ひとり。あの時はひとりで戻ることになるとは思っていなかった。


もしイシュトを捕らえるのが無理でも、オーウェンや兵たちと戻るのは至極当然と思っていたのに。


溢れ出しそうな感情をぐっとこらえる。ルノは意識を制御し、ひとつ息を吐いて感情を追い払うと、辺りを窺った。


王宮が近付くにつれ、兵士が多くなる。彼らに悟られないよう、一挙手一投足に神経を払う。


王宮内部に侵入するまでが重要だとルノは思っていた。


入ってしまえば何とか出来ると自負しているのは、元々ルノは直接の武力行使より、潜入などの搦め手を行うことのほうが慣れているからだ。


それに当然ながら、ブラウ王宮内部は熟知している。


兵士の見張りルート、交代時間も、あらかた頭の中に入っている。王はそれらに関心が薄いことも。それを見越して、兵士長はめったに変更や改変をしない。


だからきっと平気で、何年前からかわからない見張り規則が引き継がれているだろう。