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荒い息を整えもせず、ルノは移動し続けていた。
ふと視界に影がさし、とっさに身構える。
それは太陽が一時遮られたことによるものだとわかるまで、ほんの刹那。
仰ぎ見た次の瞬間、その場を振り切るように走り出した。
頭から、いま目撃した光景が離れない。
――そんな……そんな……
口を開いたのは、息をするためかそれとも、溢れ出る嗚咽を逃して音にしないためか。
なんにせよ、ルノは悟った。
変わり果ててしまったが、かつての恩師。見間違えるはずもない。
死鳥が運んでいたのは、オーウェンだ。
如何にしてそうなったのかも、彼女は瞬時に理解した。
自分の身代わりになったのだ。本来、責を負う筈の自分が逃げ出したことで、代わりに責を負わされたのだ、と。


