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押し黙って歩く玲奈たち一行は、エマの的確な道取りにより、ダンブディアの魔峰を着々と進んでいた。


山道を歩くということに、玲奈も慣れてはきたようだ。


慢性と化した筋肉痛も、動かしていたほうが心持ち調子が良い。


そのためあまり休憩を挟まずに歩けるようになったのも、僅かではあるが進む速度を上げているのは確かだった。


ルノの一件が玲奈たちの心に影を落とし、言葉を交わさぬこともまた、一因だろう。


そんななか、足元を気にし、下ばかり向いていた玲奈の頭上から、細かな雨のようなものが、ぱらぱらと降ってきた。


フードを被っているので、すぐは気付かず、水滴が地面を染めたところで漸く、空を見上げる。


不用意に空を仰いでしまったことで、なんの障害もなく真っ直ぐ目に飛び込んできた。


それを目の当たりにした瞬間、玲奈は、張り裂んばかりに喉の辺りの空気を爆発させた。


「レイナさま……!」


異変を察知し駆け寄るエマ。


崩れ落ちている玲奈を抱き止めるため、空を見る余裕などない。


男たちは、『それ』を見た。