ラビリンスの回廊



「なぁ。ルノがどうしたってんだよ一体」


玲奈の質問に、ヴァンもルクトも、口を噤む。


それは、答えないわけでもなく、はぐらかす為の方便を考えるでもなく、どこから話したらよいか、思案しているかに見えた。


だから玲奈は、何時までも待つつもりで彼らを見つめた。


ヴァンが、溜め息をつくようにして、重く言葉を吐き出した。


「ルノさんは、王の密命を遂げられなかった。責任をとることになるでしょう」


責任、と意味を確かめるように口を動かした玲奈へ、ヴァンは頷く。


「連れ戻せなかったばかりか、我々をみすみす取り逃してしまったルノさんに待っているのは――処罰です」


「処罰って……どんな?」


玲奈の問い掛けに、ヴァンはそっと目を伏せた。


口にするのは容易いが、想定される処罰の内容までもを『世間知らずのお嬢様』に話してもよいものか、考えているようだ。


玲奈は下唇を噛み、男性陣をキッと睨みつけた。


「ばっかやろう!」


罵りの言葉を捨て吐てる。


「道端でグズグズ言うくらいなら、戻れよ!!」


そう、ルクトに言葉を叩きつけると、玲奈は踵を返した。