ラビリンスの回廊



ぬけるような青空に、一点の濃灰色。


誰かに問い掛けたつもりはなかったから、答えの期待はしていなかった。


たまたま目にとまっただけで、特別興味があったわけではない。


だからそのまま独り言として終わらせるつもりだったのだが、意外にも応えるものがいた。


眩しそうに空を見上げたのは、エマ。


仮初めの主人に従い、鳥の正体を見極めようと、エメラルドグリーンの瞳でじっと見つめた。


「あまり見かけない鳥ですね。足に何かついている様ですから、飼鳥でしょうか」


エマの言葉に釣られたのか、ヴァンたちも空に視線を向ける。


イシュトがエマに同調した。


「確かにシェル王国では見かけない鳥だね」


弧を描く鳥に、ヴァンは一瞬眉をひそめた。


「あれは……」


言葉をもらすと、空を見上げたまま、確認するようにイシュトの名を呟く。


イシュトも鳥から視線を外さずに、言った。


「ああ、間違いないだろう」


苦々しく、その名を口にする。


「あれは、死鳥だ」