「あなたほどのかたが、まだわかりませんか。
私の顔は、イシュト様と共に旅をしていたシェル王国のものたちに、知れております。ブラウ王国のものだとも。
ここに死体があれば、我らと結びつけるのは容易い。兵を斬ったなら、甲冑にあるブラウの紋章にも気付くでしょうな。
斬らなかったのは私からの猶予であると、おわかりか」
「ルノめ……! 村をつくってイシュト様たちを逗留させたのは、それも考えてのことだったのか!」
「戦は無意味。我らの敵はシェル王国ではなく──」
オーウェンは、最後まで言うことが出来なかった。
突然、ごふっと血の塊を吐いたかと思うと、片膝をつき、その勢いのまま地面に突っ伏した。
胸に矢が突き刺さっていて、矢尻は豪力にも心臓にまで到達している。
男は地に伏すオーウェンを見下ろした。
「それさえ口にしなければ、あと少しは長生き出来たものを」
男はそう言ったあと、誰にも聞こえないくらいの小さな声で呟いた。
「ブラウの弱体化が相手方に知られるのは、望むところなのですよ」


