ラビリンスの回廊



「申し訳ない。見失った」

「ルノさまは、なかなかに健脚だな」



口々に言い合う人々。


声色に悔しさをにじませながらも、誇らしげですらあるのが奇妙だった。


オーウェンは彼らの様子を見ていたが、ふと表情を引き締める。


同時に、ひときわザラつく声が、その場に割って入ってきた。


「おやおや。“戦神(いくさがみ)オーウェン”も、さすが寄る年波には勝てませんか」

「……なんのなんの」


ゆっくりと声のしたほうに体を向けたオーウェン。


皆の表情が、消えた。



オーウェンと向かいあうようにして、甲冑を身につけた男が立っていた。


後方には、同じく甲冑を身につけた部下達が控えている。



「いけませんねぇ。実に不愉快です。

なぜ私達が到着するまでの足止めくらい、出来ないのですか?

たかが小娘ひとり」


丁寧な口調とは裏腹に、ぞんざいな態度で男は言う。


ついでとばかりに、地面へ向かってペッと唾をはいた。