ラビリンスの回廊



おう、と声が続く。


ざわめきは濁流となり、ルノにぶつかる。


奥歯をかみしめたルノの足元に、カシャンと剣が投げられた。


「お取りなさい。丸腰ではかわいそうだ」

「オーウェン……!」

「早く取らねば、死にますよ」


呼んだ名に返されたのは、温かい笑みではなく、切迫感にたかぶった視線だった。


ルノはオーウェンから視線を離さず、気を張り詰めながら、足元の剣に手を伸ばす。


「そう。それで良いのです」


刹那。一抹の寂しさがオーウェンの瞳に映ったかに感じたが、すぐに見えなくなった。


剣を持ったものの、ルノはまだ迷っていた。


手と一緒に剣もぶらりと下げて、構えようとしない。


オーウェンは、切っ先はそのままに剣を持ち直し、ルノに言った。


「たとえ戦う意志がなくとも、我々は容赦しませぬぞ。

戦うのが嫌なら、逃げてご覧なさい」


ざりざり、と砂を踏む音がして、一回りぶん、人で出来た囲いがルノに近くなる。


ルノは一瞬で、その囲いを構成する人々に目を走らせた。