ラビリンスの回廊



──────────


「行ってしまいましたな」


村長の役を演じていた男が、深い息を吐く。


「よろしかったのですか、ルノさま」


じっと前方を見据えて返事をしないルノに、男はゆっくりと言葉を続けた。


「彼らに、ついて行っても良かったのですぞ」

「オーウェン」


そこで初めてルノは、言葉を差し止めるように、男の名を口にした。


しかし男は、よどみのない瞳でルノを正面に見て、真摯に言葉を続ける。


「我々の身を案じて下さるのは嬉しゅうございますが、ですがルノさま」


真っ直ぐな視線に耐えきれないかのように、ルノは男から目をそらした。


ルノと男を、村民の格好をしたブラウ王国のものたちが、いつしかとり囲み。


緩い囲みは、ルノを何かから守ろうとするかのようで。


彼らの思惑に気付かないまでも、ルノは彼らの誰一人にさえ、視線を向けることが出来なかった。


「我々はこの策──いや、ブラウ王国を出た際に、既に覚悟を決めた身。

貴女さまの一存ではなく、我々がこの道を決めたのです。

だから、最後まで我々と共にと思っているなら、おかど違いですぞ」