ラビリンスの回廊



「こちらを」


そう言って服をベッドの上に置くと、エマはタオルを玲奈の頭にふわりとかけ、そっと雫を押しとる。


「じ、自分でやるよ」


エマからタオルを受け取ろうとしたが、やんわりと拒否される。


「姫様のお世話をするために私はいるのですから」


そんなよくわからない理由で断られ、玲奈は反論する気も失せていた。


「なぁ……」

「はい」

「その、姫様って、なんなワケ?」


玲奈の質問に、エマの手がぴたりと止まる。


だがそれは一瞬で、またエマは自らの仕事をすすめていく。


「姫様は姫様です。ここ、シェル城の」


そう言って、一通りふき終わった髪からタオルを離し、玲奈の制服に手をかけた。


玲奈はそれも自分でやると言ったが、エマには通用しない。


だが、玲奈も譲れない。

双方が妥協し、玲奈が着替えるのをエマが手伝うというかたちで、なんとか決着がついた。


玲奈が、エマに背を向けて着替えながら、先程の話の続きを求めた。


エマは、どうやら玲奈が本当にこの大陸や王国のことを知らないらしいと悟り、「では簡単に」と語り始めた。