しかも王子であるイシュトに対して、それを正面きって行動するほど、王宮内部は腐食しているということか。


王を第一に据えるという命令系統すら、無きに等しいと、彼らは身を持って示しているかに感じさせる。


王よりも国をとると、彼らの目は何よりも雄弁に語っている。


「イシュト様。どうか王宮へお戻り下さい」


ルノが改めて口にした言葉は、先ほどとは違った響きを持っていた。


王たちの代弁ではなく、自らが考えて出した結論なのだろう。


そしてそれをイシュトに聞いてもらうため──確実に足をとめさせるため──更に王へは偽りの忠誠心を示すため──様々な思惑を込めたのが、この集落というわけだ。


「戻って、親父と女狐に隠居でも迫るか?」


イシュトがフンとせせら笑う。


「笑わせる」