ラビリンスの回廊



中に入ると、今まで歩いてきた廊下とは全く様子が違い、どちらかと言えば最初に入った部屋のように、あまり装飾が施されていないのがわかった。


広さは充分にあり、こざっぱりとした感じはあるが、全体的にどこか古めかしく、質素だ。


木の床はギシギシと音を立てる。


さすがに壁はむき出しのレンガではなく、壁紙が張られてはいたが、それも煤けている印象だ。


ここにはランプすらなく、火が付けられてからだいぶ経ったらしい、ちびた蝋燭が壁のあちこちに並べられている。


ちらちらと蝋燭の炎で照らされた机と椅子は、もう何十年も使い込んでいるものだし、ベッドに敷いてある白いシーツは薄汚れて見える。


申し訳程度に毛布が置いてあるが、使い古された感は否めない。


きっと、雨に濡れた自分を着替えさせるのに、汚れても構わない部屋に案内されたんだろう、それでも、一晩中あそこをさ迷ったり、あのまま雨に濡れるよりはマシ、と玲奈は自分を納得させた。


部屋にはタンスもあり、エマはそこから一着の服とタオルを取り出した。