翌朝、一行と村長は食卓を囲んで朝食をとっていた。


イシュトもルノも昨夜のことには勿論触れず、玲奈もルノが部屋を出たことすら気付いていなかった。


昨夜の夕食ではなかった会話も、お酒がない今は適度に交わされ、ルノの酌で会話出来なかったのではないかとすら思えるほどだった。


玲奈の前には相変わらずのパンと水だったが、他の面々の前には美味しそうな匂いの食事が並んでいて、玲奈は羨ましそうにそれを見ていた。


その視線に気付きながらも、誰も何も言わない。


しばらくしてヴァンが、村長に声をかけた。


「泊めて頂いて助かりました。

聞けばこの集落はまだ新しいそうですね。
それなのに押し掛けてしまってご迷惑かけました」


お気にせずに、という村長の言葉に微笑む。


「どちらから移り住んでいらしたんですか?」


他愛もない世間話をするように切り出されたその言葉に、村長は笑みを深く刻みながらゆっくりと手を休める。


「あまりにも田舎ですので、ご存知ないと思います」


それ以上喋るつもりはないという雰囲気に、ヴァンは小さく頷いた。