イシュトの思惑や感情はは読みとれず、ルノの思惑をききとろうとするもの。
ルノはうっすらと微笑んだが、ルノの感情すら気遣う素振りはないイシュトに、ルノは言葉を選ぶことなく紡ぎだす。
「レイナさんかエマさんがお好きなんですか?」
その問いかけ自体も、ルノにとってはどうでも良いことのような言い方だった。
多少からかうような声色に、イシュトは鼻で笑って返す。
「もしお二人ともイシュト様のおめがねに敵わぬなら……」
胸に触れさせた手を、ゆっくりと持ち上げて頬へ、そしてくちづけて。
誘い込むような瞳でイシュトを見つめ、答えを促す仕草をする。
「こたえる義理はない」
拒絶も容認もせず、ばっさりと切り捨てたイシュトに、クスクスと笑い声を洩らした。
「胸のひとつでも掴ませれば、簡単に落ちて下さると思ったんですけど」
「心外だな」
今さら女なんて珍しくないとごちたイシュトに、ルノはまた笑う。
誰彼構わずに抱く時期は過ぎたと言いたいのかもしれない。