「お部屋へご案内します」
そう言ってすたすたと歩き出すエマに、玲奈は慌ててついていく。
中に入れてくれた女性に会釈し、二人はその場をあとにした。
その部屋を出ると、豪華絢爛な装飾があちこちに施されていた。
先ほどみたランプとは違い、ここの照明は、凝った技巧の美しい細工のカバーがしてある。
落ち着いた赤色の絨毯が足元に敷き詰められ、しっとりと長い毛並みに足音が吸い込まれていく。
ぼんやりとした橙色のランプに照らされた、大きな額に入った絵画。
所々にある扉の脇には、西洋風の甲冑が並べられ、まるで本物の人間がそこにいるのかと玲奈に錯覚させた。
落ち着かない玲奈に構うことなく、エマは静かに歩みを進めていく。
いくつかの扉の前を通りすぎ、長い階段を登りきり、廊下の突き当たりでやっと終わりが見えた。
今までに見た扉の中で一番古く、一番みすぼらしいものの前でエマが立ち止まったのだ。
「どうぞ」
耳障りな音を立てて軋む扉を開け、エマは玲奈に入るように促した。


