ラビリンスの回廊



ルノが既に自己紹介をしていたのに対し、彼女が一行の顔を知っているのはイシュトとヴァンだけだった。


だから玲奈を含めてシェル王国の三人はそれぞれルノに自己紹介をする。


一人一人が名前を言う度に口の中で復唱したルノは、全員の自己紹介が終わるとにっこりと微笑んで「宜しくお願いします」と頭を下げた。




「じゃ、行きますか」


ルクトのその一言で出発が決まり、ルノも反論することなく追随した。


ルノはその体躯からは考えられないくらい健脚で、息せき切ることもなく涼しい顔でついてくる。


もっともバテ気味なのは玲奈だけで、他の面々は多少息が荒い程度だったが、ルノの疲労のなさはそれ以上だ。


感心したのか不思議に思ったのか、ヴァンがルノに声を掛けた。


「随分と山道を歩くのに慣れているんですね」


ルノはちょっとだけヴァンを振り返るかのように顔を横に向ける。


「田舎育ちですから……」

「どの辺りなんですか?」

「いえ、もう、あまりの田舎でお恥ずかしいです」


その言葉を素っ気なくつきだして、ルノはもう話すことはないとばかりに顔を前に戻し、歩くのに専念しているかのようだった。