ラビリンスの回廊



「参ったなぁ……」


頭を掻きながら、小さな溜め息と共にルクトがルノを見る。


ルノはそのルクトの視線には気付いていないようだった。


そして玲奈もルクトと同様、僅かだが困惑をしていた。


自分と同じ年頃の女の子が、たった一人で魔峰と言われる山脈へ足を踏み入れる。

その覚悟に敬服しつつ、それを強いるほどのルノの目的が『紅玉』。


目的が同じであり、なおかつこのまま出逢わなかったように別れるのも、ルノの心細そうな様子から出来そうもない。


だが連れ立って行くかそれとも振り切る思いでここで別れるか、それを決める権限は一体誰が持つというのだろう。


玲奈が小さく息を吐き、再びルクトが頭を掻いたとき、突如イシュトが口を開いた。


「行くぞ」

そう言った先はルノ。

面食らった顔をした彼女以上に、玲奈の方が驚きを隠せなかった。


「ち、ちょっ……」


勝手に決めるなといいかけた玲奈に、ルクトが慌てて制止の声を上げる。


そしてルノに聞こえないよう、小声でボソボソと註釈を入れた。