ラビリンスの回廊



王族に向けられるそれと、ヤンキーに向けられるそれは違うものだが、顔色を窺われながらの会話は不快度を増すというのは同じだ。


同時に、そういう不快感をこの世界に来てからは感じていなかったことに、今更気付く。


お互いが対等な立場として話していたからだと思い当たり、なんだか無性にかきむしりたくなった。


この世界のことを何も知らない自分を見下したりせず、姫という立場にあっても変に持ち上げたりせず、一人の人間として玲奈を見てくれていた彼ら。


イシュトだって、身分が明かされたとしても威張る風でもなく、変わらず接している。


──まぁ、元々態度でけぇんだけど。


でも。

少なからずとも、彼らならば、ルノの言葉を曲解はしないはずだ。


しかし、玲奈の思考に小さく静かに影が落とされる。


敵を殺すこの世界では、ルノの反応が当たり前なのかもしれない。


気に食わないことを言ったら、斬り捨てられることもあるのかもしれない。


そう思ったら、何も口を出すことは出来なかった。