ヴァンはゆっくりとエマに近付く。
ルクトは黙ってそれを見ている。
その切なそうな顔に気付いたものはなく、焚き火のゆらゆらとした光に映るのは、ヴァンとエマ。
イシュトと玲奈はただそれを見つめ、静かに佇んでいた。
「『大いなる流れ』なんて、もとからない。
ルサロアと呼ばれる預言者もいない。
いるのは……王国に囚われた少女が、ひとり」
そうなんでしょう?と言ったヴァンの瞳はとても慈しみに溢れていて。
エマの揺らいだ瞳を救い上げるかのように、いつまでも優しく見つめていた。
皆が見つめる中、エマのエメラルドの瞳が瞬いた。
瞬きと同時に落ちる、ひとしずくの涙。
固い表情が緩んで、涙と共に何かが落ちていったかのようだった。
「……なぜ、そう思ったのですか?……ときけば、私の知りたい答えは返ってくるでしょうか?」
落ち着いた声でそう言ったエマの言葉に、ヴァンの話があながち的外れでなかったことがわかる。
だがヴァンはエマの言葉に返事をするつもりはない、と言い。
エマも追及は伏せ、意味がよく通じていない玲奈の顔に向きなおった。


