ラビリンスの回廊



ヴァンが玲奈から視線を移し、ベンス兄妹へと向かったとき、苦々しく感じているらしいエマの瞳に、より一層口角が上がる。


「レイナさんも同感のようですよ」


やんわりとした口調の先で、エマの張り付いた無表情が崩れる。


「これでも全て『大いなる流れ』の意思だ、と?」


追い詰めるかのように言ったヴァンに、エマは小さく息を吐いた。


「……シェル王国には必要なのです」


何が、と言うのは叶わなかった。


ヴァンがそこから引き継ぐかのように意見を述べたからだ。


「『大いなる流れ』のせいにして、『光』の犠牲のもと、シェル王国は続いてきたのですからね。

砂上の楼閣とも知らず、民衆は繁栄を貪るだけ。

『大いなる流れ』の言う通りにしていれば安心、間違いない……と。

思考が怠惰になってしまった民衆に『さだめられた運命』という言葉は良く効いているようですね。

しかし、外から来た『光』にはそれは通用しない。
そのために、選ばせているようなフリをして誘導する。
わざと『運命』に抗うように仕向けつつも、『紅玉』さえ手に入ればいいというところでしょうか。

それがこの旅の本当の目的なんでしょう?」