「……もういいよ。切るね」
小さく、低く、耳に響いた声。
その後に続いたのは、無機質な機械音だけだった。
どうしよう…
それしか頭に浮かばない。
「笑佳ちゃん?どうかした?」
キッチンに戻ってこないあたしに、後田くんが様子を見に来た。
「あ、ごめん。もしかして、まだ電話中だった?」
あたしの手にある携帯をちらりと見て、そう言った。
「ううん………大丈夫だよ」
嘘なんか、つかなきゃ良かった。
相手が誰だったとしても、嘘ついて男の人と会ったなんて、怪しまれて当たり前なのに…
あたしはただ、雄哉くんに驚いて、喜んで欲しかっただけなのに……

