君の声、僕の歌姫

ラウトはそこまで言いかけて、何かが引っ掛かると言葉を止めます。


(そういえば……フェネルの奴……)


遡る事少し前。ラウトが目の前の魔物に恐怖を覚えていた時の事です。

フェネルはラウトにこんな発言をしていました。


“スティーの声で返事を聞くんだろうが!”


ラウトは顔を真っ赤にし、真先に誰もいないと分かりながらも後ろを振り向きました。

その行動にキルシュとハルトは首を傾げました。


「どうかした?」
「また魔物か?」


ラウトはたった一言、感情を押し殺して“魔物じゃない”と答えました。