君の声、僕の歌姫

「何だそれ! 確かに今まで使えなかったけどさ……けどさ……
スティーの声取り戻すのには魔法が使えないと駄目だとか言う奴がいるから、
そいつが魔力を貸してくれて使えるって言うか……」


ラウトは無我夢中になって気付いていませんでした。

他人にはあまり言いたくなかった“スティー”という単語を発していた事に。

その言葉にニヤリと不敵な笑みを浮かべたのは、キルシュでした。


「へえー……? スティーって言うのが余程大切な人って事ね? もしかしてコレとか?」


キルシュは小指を立ててそう言いました。

ラウトは更にムキになって反論しました。自身がスティーと言った事にも気付かずに。


「何でお前スティーの事知ってるんだよ!? ていうか俺とスティーはそんな関係じゃ……ん?」