君の声、僕の歌姫

そういえば、とラウトは思い出しました。

フェネルは襲われる前に中にはラウトを狙う魔物も出始めたと言った事を。

つまりそれは魔物と戦わずして、イフェルの元へ行く事は不可能と言う事を意味していました。


『此処でお終いか? あの時の威勢はどうした。スティーの声で返事を聞くんだろうが!
試練に立ち向かえ。此処で何もせずだとワタシは……』


そこまでの言葉を聞いた所で、ラウトは立ち上がりました。


『今すぐにでも、お前を殺す』


剣を握りしめて恐怖を抑えられるだけ抑えて、走り出します。

ヤケになってしまっていたのか、悲鳴にも似た叫びをあげながら。

キルシュとハルトはいよいよ追い詰められた時でした。