それは真っ暗な闇の中でした。明かりは窓から降り注ぐ月明かりのみの部屋。

そこに赤い瞳の人間が窓からの景色を眺めるように、立っていました。

その人間は何処となく誰かに似ていましたが、誰に似ているのかは分かりません。


「フェネル、か…………無駄な事を」


そう一言つぶやき、光り輝く大きな満月を見上げます。


「力づくではないというのに。……良いだろうそっちがその気なら」


人間は不敵な笑みを浮かべ、先程よりも低いトーンで呟きます。


「こちらもそうさせてもらおう」


何処かで狼が遠吠えをあげました。